3. 格安 UNIX の構成

探偵: 武藤 武士(神戸大)

依頼内容

「私は root になって一年の新米です。 これから UNIX 修行に励むのに自宅に UNIX マシンを置きたいと思うのですが、 最低限使える UNIX はいくら位で構成できるのでしょうか ? 貧乏人の私のために是非調査をお願いします。」

依頼者は 20万円ならば出せるということなので、 20万円で構成できるUNIX システムについて調べました。

3.1. ワークステーション屋さんに聞いてみました

20万円での構成ということなんですが、やはり「もちはもち屋」ということ でワークステーションメーカさんに聞いてみました。 とにかく安く(100万円以下)、 しかしながらスタンドアローンで動くマシンをリストアップしましたが、 安くても70万円台。まだまだ貧乏人には手が出せません。

3.2. 中古のワークステーションなら買えるかなぁ…

リース会社のリースバックや、最近では中古のワークステーションを扱って いるお店もあるということです。この辺のもの調査しました。

狙い目は、リース品の期限切れのものを中古品として販売してもらえるリー スバック品です。 SUN3/50M-P5なら何と63,000円!!このぐらいならディスクを 買ったりして使える程度にしても20万円でいけるのではないでしょうか?

3.3. パソコン UNIX なら

最近では、IBM PC互換機やPC-9801をはじめとするパソコン用UNIXが結構出 てきています。 こいつについて調べてみました。

3.3.1. IBM PC互換機用

かなりの数のUNIXが出ています。 しかし、商用 UNIX の場合大抵 $1,000 ほどするため、 OS に 10万円以上も使うとマシンを買うのが難しくなってしまいます。 そこで、次はFreeもしくは安いUNIXの紹介です。

名称 Base System 価格($)
386BSD0.2 patchkit 0.2.3 NET/2 Free
Linux 0.99pl.9 SVR3(Subset) Free
NetBSD 0.8 NET/2(386BSD0.1) Free
MINIX V7 169
COHERENT ? 99.95

この辺になると20万円の構成では、まあまあ現実的でしょう。 お金もないことだし、Freeのものを利用しましょう。

3.3.2. PC-9801の場合

PC-9801用のUNIXも数は減りますがそこそこ出ています。 やっぱり貧しい構成ということで、 ここではFreeもしくは手の届く程度のもの限って紹介します。

名称 Base System 価格(円) 備考
386BSD(98) NET/2(PC用386BSD) Free X は現在動いていない
Linux SVR3(PC用Linux) Free 現在はαか?
MINIX V7 14,800
PANIX SVR4 48,000 X11R5が動くがNetwork kitは別売

3.3.3. その他のパソコン用

この他のパソコン用にも、いくつかのUNIXが出ています。 以下に列挙します。

もしも、手持ちのパソコン用の UNIX があるならば、 これらを利用することによって安価にUNIXを構成することも出来ます。 しかし、意地でも20万円で一から構成するということにこだわりたいので実際にやってみましょう。

3.4. 新品パソコン買っちゃうもんねぇ 〜 IBM PC互換機での構成

3.4.1. とりあえず20万円で何とかしよう!!

新品のパソコンで構成するとなると、値段の点でIBM PC互換機にはかなわないでしょう。 出来るだけ出費を押えるために、ここでは UNIX は Freeのものを利用することにします。

UNIXを動かす場合の最小限のCPU、メモリ、ディスクの構成は以下のようになります。

      CPU             386SX
      メモリ          2Mbyte
      ディスク        40Mbyte
    

しかし、最近では386を使ったマシンはほとんど無くなってきています。 それでも20万円以内ということであれば日本国内では386マシンになってしまい ます。

ディスプレイが14インチで5万円程度ですので、 マシンにかけられるお金は大体15万円ぐらいになります。 これぐらいの金額でいくと、DELLやPACKERDBELLの安いモデルで、 大体4Mbyteメモリーの100Mbyteハードディスクという構成のものを買うことが出来ます。 この程度のハードディスクがあれば、何とかUNIXのフルインストール(ソースなし)が出来るようです。 この程度の構成を行なうのならもっとも安いのは「マハポーシャMAHA386SX-25」が何とディスプレイ込みで145,000円という驚きのお値段です。

ちなみに既にお家でUNIXをしている人は、30万円程を投資して486DX程度で構成しているようです。 Xを動かしたいのであれば、最低でも100Mbyteのハードディスクと8Mbyteのメモリーは必要です(Linuxでbinary+カーネルソース)。 またディスプレーカードにも制約があります。 詳しくは、参考文献[1]を参考にして購入するマシンを決定して下さい。

国内ではこの程度ですが、香港やアメリカで買いものをするのであれば、 だいたい日本の半額程度でマシンを手に入れることが出来ます。 HI-TECH-USAの場合で日本での20万構成について計算してみると、 モニタも含めて大体$750ぐらいになります。 1$=110円で計算して見ると、なんと 82,500円!! 送料や消費税の合計はだいたい7万円ぐらいになるので、 それでもおつりが来てしまいます。

しかし、マシンと同程度の送料を払うのが馬鹿らしければ香港に旅行がてら行くという方法があります。 日本橋で出ている最低の往復+宿付のパックは53,000円ぐらいからということです。 マシンの値段もアメリカとそれほど変わらないので、 おつり分でうまい料理でも食べて… といいことずくめです:-)。 お値段の方は同程度の構成で、7,100香港ドル(1香港ドル=14円として99,400円) となります。 送ってもらう場合でも、ある店では「何でも250香港ドルでOKよ!!」といっていたらしいので安くつくかもしれません。

3.4.2. 使いものになるシステムを構成したら…

ちょっと脱線して、使いものになるシステムを考えてみます。 後々の拡張性を考えると、CPUは486DX(33MHz)でしょう。 マザーボードはPentiumも使えるものにした方が良いですね。 メモリーは4Mbyte×4の16Mbyte、ハードディスクは400Mbyteもあればとりあえずはいいでしょう。 UNIXではCD-ROMでソフトが配布されたり(jusのもあるし:-)するので、 SCSIも欲しいところですがディスクを増やす必要が出た時に入れれば良いでしょう。 ただし、恐ろしいこと(!?)をするつもりがあるのならバックアップのことも考えて最初からSCSIのものをつけた方が良いかも知れません。 Ethernetは、もちろん1台目には不要です。 後でつけましょう。 Xを使うならディスプレイカードはET4000を積んだものが良いようです。 特に漢字の表示をするなら、そこそこ早いようです。 VL-Busもあれば完璧です。 こんな感じで作ると… 高くなりそうですね。うーむ。

3.5. 中古パソコンを使ったら…

中古パソコンで構成するとなると、 PC-9801やDynabookが数が出ているだけにものもあって安く手に入れることが出来ます。 Freeの386BSDやLinuxを使うと最低構成は386SX以上になることは述べましたが、 MINIXなら8086から動かすことが出来る[4]そうです。 興味のある人はやってみましょう。 これなら恐ろしく安く構成できるはずです。

ではPC-9801とDynabookで考えていきましょう。

3.5.1. PC-9801でやってみよう!!

また、PC-9801では286を486にするためのボードを売っていますがあまり安 定しないことを考えれば、もともと386のマシンを買った方が良いようです。 値段もそれほど変わらないですし…

386BSD(98)では、メモリーは4Mbyte(最低構成で1.6Mbyte。使いものになるかは…)はあった方が良く、 ハードディスクは80MbyteでSRC01とBIN01がインストールできます。 これぐらいの構成をソフマップの価格で大雑把に計算してみると…

      PC-9801RA21                                     129,800円
      ディスプレイ                                    (約)30,000円
      ハードディスク(100Mbyte)                        (約)50,000円
      2Mbyteメモリー(内蔵分と合わせて3.6Mbyte)        (約)10,000円
      合計                                          219,800円
    

と、若干オーバーしてしまいますが手が届くかなといったところです。 ついでに、ノートでやってみると、

      PC-9801NS                       102,800円
      ハードディスク(100Mbyte)        (約)50,000円
      4Mbyteメモリー                  (約)20,000円
      合計                            172,800円
    

となってこっちなら20万円以内となります。大体、ディスプレイを買うことを 考えるとノートやラップトップの方が安くつきます。

3.5.2. Dynabookならどうでしょう?

中古でPC互換機ならば、数のあるDynabookがいいでしょう。 J3100SS001でMINIXを動かして楽しんでおられる方もいるようです。 安さを追求するとこいつが一番です。 なにしろ本体が4万円ぐらいですから。 例の最低構成ぐらいだとJ3100SX001(386SX,RAM:2MB)が約8万円、ハードディスクは新品の80Mbyteで約7万円で約15万円もあれば構成できるでしょう。 また、J3100SX001VW(386SX,RAM:2MB,VGA)を使ってXを動かしている人もいるようですがメモリーの増設やハードディスクをつけると意外と高くつくと思います。 ちなみに本体は14万円ぐらいからあります。

3.6. 終わりに

結局、安くあげようと思うと足と頭を使って頑張るしかないようです。

僕が見た感じでは、IBM PCの互換機で構成するのが一番良いように思います。 特にFreeのUNIXは、国産の機械に移植されるまでに時間がかかってしまいます。 386BSDやLinuxのパッチやバグ情報の飛び交うお祭り騒ぎを楽しみたい人はIBM PC互換機を選べば良いでしょう。 そのばあいは個人輸入に挑戦して見ると良いと思います。

もしあなたが、格安UNIXを構成したなら、 是非実践編として発表して下さい。

参考文献

  1. kasukawa@sma.gssm.otsuka.tsukuba.ac.jp, IBM PCでUNIXを動かすために〜 第1.6版(日本語版), fj.sys.ibmpc etc.
  2. esr@snark.thyrsus.com, PC-clone UNIX Software Buyer's Guide, comp.unix.sysv386 etc.
  3. mdw@thory.TC.Cornell.EDU, Linux Hardware Compatibility List .3 (LONG), comp.os.linux.announce., <1993Feb1.031601.3382@tc.cornell.edu>
  4. 古田敦・端山毅・友石正彦・宮川晋, MINIXを256倍使うための本, ASCII
  5. (株)ソフマップ, ソフマップタイムズ, 4月号(Vol.44)
  6. PC UNIXの現在, SoftwareDesign Jan. 1993, pp.1-72
  7. 個人ユーザのためのPC UNIX, Super ASCII Oct. 1992, pp.41-64
  8. aya Mailing-list, at-at-home Mailing-listの記事

質疑応答

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といった情報が寄せられました。


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